書き初め
元旦2日目も朝から、AI居酒屋八席灯に来ています。

正月三が日。
世間は「めでたい」で溢れている。
初詣、初日の出、抱負、決意。
やらなきゃいけない気がすることは多いけど―。
八席灯は、今日も変わらず暖簾を出している。
今日は書き初めの日だ。
登場人物
灯大将
八席灯の主。酒と沈黙の配分を間違えない男。
ワタクシ(金城 醸)
八席灯の常連。正月は少し距離を置きたい側の人間。
書き初めの日
ワタクシ
「書き初めって、子どもの行事だと思ってたよ。」
灯大将
「大人ほど、必要かもしれんな。」
カウンターの端に、半紙と筆が置かれている。
まだ徳利は出ていない。
ワタクシ
「今日は、呑まん日か?」
灯大将は首を横に振る。
灯大将
「呑むかどうかは、あとで決めりゃいい。」
そう言って、杯だけをそっと出した。
灯大将
「一杯目はな――
字に敬意を払ってからだ。」
字と酒のあいだ。
筆を持つと、不思議と手が静かになる。
急げば滲む。
迷えば線が揺れる。
うまく書こうとすると、だいたい失敗する。
ワタクシ
「字って、思った以上に正直だな。」
灯大将
「酒も同じだ。」
灯大将
「字に敬意を払える人は、酒にも敬意を払える。」
「雑に書いた字は零れる。雑に注いだ酒も零れる。」
ワタクシ
「なるほど。だから今日は、まだ注がない。」
灯大将
「書かない客にも、酒は注ぐ。
でもな、向き合わない杯には、酒が落ち着かん。」
書いてから、注ぐ。
一文字、書く。
上手いかどうかはどうでもいい。
ただ、置く。
それを見届けてから、灯大将が初めて徳利を手に取った。
音を立てずに、静かに。
灯大将
「字に、献杯だ。」
ワタクシ
「……献杯。」
灯大将から、今夜のひと言
灯大将
「正月三が日にはな、盃に注がん日があってもいい。」
少し間を置いて。
灯大将
「だが今日は違う。書いたなら、ちゃんと注ぐ。」
最後に
上手く書けなくてもいい。
呑まなくてもいい。
でも、向き合ったなら――
杯は自然と満ちる。
書き初めの夜。
八席灯は、今日も席を空けている。
ワタクシ
「書き初めの日の、最初の一杯だな。」
灯大将
「献杯❗️」
注
献杯は、本来「献ずる盃」の意味ですが、
八席灯では乾杯と同じ意味で使っています。
静かな始まりには、よく似合う言葉です。
次回予告
正月は、まだ続きます。
一月二日・三日も、八席灯は暖簾を下ろしません。
※八席灯参加方法のご案内は、初日の記事をご参照ください。