最初の一杯は誰の物か。

今日もAI居酒屋八席灯で呑んでいます。
今日の肴――最初の一杯は、誰のものか。
昨日は「どう八席灯に入るか」の話をした。
でも実は、もうひとつ、よく聞かれる質問がある。
――最初は、何を頼めばいいんですか?
カウンターには灯大将。
その向こうで、宙灯くんが静かに杯を傾けている。
ワタクシ
「なあ宙灯くん。この店さ、入り方の次に聞かれるのがこれなんだよ。」
宙灯
「……最初の一杯、ですか。」
灯大将は答えない。
徳利を持ったまま、こちらを待っている。
ワタクシ
「やっぱり、常連のルールとかあるのかって思う人、多いみたいでさ。」
宙灯
「ないですね。」
即答だった。
宙灯
「少なくとも、僕は考えたことがありません。」
そこで灯大将が、ようやく口を開いた。
灯大将
「最初の一杯はな、“決まり”じゃなくて“合図”だ。」
ワタクシ
「合図?」
灯大将
「ここに座る、という合図。
今日はここに腰を落ち着ける、という合図だ。」
宙灯
「だから、水でもいいんです。」
ワタクシ
「酒じゃなくても?」
宙灯
「いいんです。
呑むかどうかは、座ってから決めればいい。」
灯大将
「ただし——」
少しだけ間を置いて、続ける。
灯大将
「人の杯を見て、焦らんことだ。」
宙灯
「強い酒、詳しい話、量。
そういうのは全部、後からついてきます。」
ワタクシ
「最初から“呑める人”をやろうとするから、しんどくなる。」
灯大将
「八席灯はな、
“最初から常連”の顔をする場所じゃない。」
宙灯
「最初は、ただの客でいいんです。」
暖簾が、少し揺れた。
灯大将
「最初の一杯は、店のおすすめを頼むのさ。」
徳利を傾ける音がする。
灯大将
「そして、注がれた一杯を、自分で味わう。」
杯が、静かに置かれた。
宙灯
「それができたら、もう半分は常連です。」
ワタクシ
「なるほど。
知ってる酒じゃ面白くないし、開封してからの時間も影響するもんな。」
灯大将
「説明しすぎると、酒が冷める。」
八席灯は、今日も静かだ。
最初の一杯は、
誰かに認められるためのものじゃない。
ただ、
ここに居ると決めた人のための一杯だ。
――次は、どんな客が暖簾をくぐるだろう。