酒蔵の皆さんへのご提案【お宅の酒をふるさと納税の返礼品にしてみませんか】

先の記事の緊急提言では呑兵衛は日本酒を買ってくれるということがスタートでしたが、さてその実現には、ふるさと納税の返礼品に日本酒が増えることが必要だと気づいていると思います。でも、ふるさと納税をするとこんなメリットはあるって話は、巷間でよく聞いていると思いますが、そもそも返礼品って何が選ばれているんだ、選ばれるにはどうすればいいんだという話はあまり出回っていないので、よくわからないという方が多いと思います。そこで、その方法を解説してみたいと思います。

ふるさと納税の返礼品は何が選ばれるのか

ふるさと納税の返礼品は何が選ばれるのか ふるさと納税に関するニュースで、地域間の返礼品競争が過激になって、平成29年から返礼品に明確な条件がついたということを覚えているでしょうか。 令和2年現在では、大きく2つの条件が示されて、
返礼割合は3割を超えてはいけない
返礼品は地元産品に限る
となっています。

1つめの条件の返礼割合が3割超えてはいけないというのは、自治体が寄付額と返礼品の組み合わせを設定するときの問題なので、どちらといえばボールは自治体にあるといえます。(もちろん、自治体にいくらで納品するかということはこちらで考えることです。)

2つめの「地元産品に限る」とは、一見わかりやすい基準ですが、あいまいさがまだあるところです。そこで示されているのが以下の9つの基準で、それか一つでもあてはまれば、「地元産品」としてふるさと納税の返礼品に提案できる商品となります。

地場産品基準基準 一 当該地方団体の区域内において生産されたものであること。 二 当該地方団体の区域内において返礼品等の原材料の主要な部分が生産されたものであること。 三 当該地方団体の区域内において返礼品等の製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているものであること。 四 返礼品等を提供する市区町村の区域内において生産されたものであって、近隣の他の市区町村の区域内において生産されたものと混在したもの(流通構造上、混在することが避けられない場合に限る。)であること。 五 地方団体の広報の目的で生産された当該地方団体のキャラクターグッズ、オリジナルグッズその他これらに類するものであって、形状、名称その他の特徴から当該地方団体の独自の返礼品等であることが明白なものであること。 六 前各号に該当する返礼品等と当該返礼品等との間に関連性のあるものとを合わせて提供するものであって、当該返礼品等が主要な部分を占めるものであること。 七 当該地方団体の区域内において提供される役務その他これに準ずるものであって、当該役務の主要な部分が当該地方団体に相当程度関連性のあるものであること。 八 次のいずれかに該当する返礼品等であること。 イ 市区町村が近隣の他の市区町村と共同でこれらの市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを 共通の返礼品等とするもの ロ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村と連携し、当該連携する市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを当該都道府県及び当該市区町村の共通の返礼品等とするもの ハ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村において地域資源として相当程度認識されているもの及び当該市区町村を認定し、当該地域資源を当該市区町村がそれぞれ返礼品等とするもの 九 震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により甚大な被害を受けたことにより、その被害を受ける前に提供していた前各号のいずれかに該当する返礼品等を提供することができなくなった場合において、当該返礼品等を代替するものとして提供するものであること。

出典:(PDF)ふるさと納税指定制度における 令和元年6月1日以降の指定等について 総務省自治税務局

役所ことばで書かれているので、翻訳が必要でしょう。まず、条件にある「当該地方団体の区域内」とは、簡単にいうと「その市区町村」と読み替えてもらっていいです。

条件一は「その市区町村でつくられたもの」ということです。酒に置き換えれば、A市にある蔵が、A市の農家がつくった酒米で仕込んだ酒は、当然この条件でA市のふるさと納税の返礼品になれます。地元の米と水でつくったこだわりの逸品となります。ふるさと納税のストーリーとしても、私たちの提言のストーリーとしても、とてもきれいなものです。こだわりの逸品ですが、生産量は限られるのが難点でしょう。

条件二は、「原材料がその市町村でつくられていること」です。酒に置き換えれば、「その市町村でとれた酒米を100%使って仕込んだ酒」ということです。実は、この条件は原材料の条件を決めているだけで、どこでつくるかは決めていません。つまり、ふるさと納税を受け付けているA市の酒米を使った日本酒であれば、日本全国どの蔵で仕込んだ酒でもA市のふるさと納税の返礼品になります。A市とは別の県にあるB蔵がA市から買っている酒米で仕込んでいるとはっきりしている商品Cなら、B蔵はA市に対してCをふるさと納税の返礼品として提案できます。例として、酒米の王様「山田錦」の産地西脇市は、県外のいくつかの酒蔵にふるさと納税用の酒を作ってもらって、返礼品にしています。(西脇市ホームページ「広報にしわき」令和2年4月参照)2020年の人気返礼品の日本酒「醸し人九平次 純米大吟醸 山田錦 EAU DU DESIR」は、名古屋の株式会社萬乗醸造がつくっていますが、西脇市の返礼品になっています。

条件三は、「原材料は別の市町村でつくられているけれども、その市にある工場等で肝心要の箇所がつくられている」ことです。例によって酒に置き換えれば、「別の市町村でとれた酒米を使っているけど、すべての工程を市町村の中でつくっている酒」ということです。原材料を決めている条件二と違って、条件三はつくっている場所を決めています。D市にあるE蔵は、F市で栽培された酒米を使っていますが、D市の水と風土で醸したこだわりの酒を造っているので、D市に対してふるさと納税の返礼品として提案できます。

条件四は、「流通の仕組みが、隣接する市町村で一括して取扱いになっているもの」で、広域合併して複数市町村にまたがるJAから調達する場合や、複数市町村にまたがる産地組合があてはまるでしょう。条件八のハも似たようなもので、隣接する複数市町村が一緒になってして販路拡大等に取り組んでいる地域資源や地域団体商標に登録されているような産品を原料に使う場合があてはまります。

何らかの形でこだわりをもった酒を造っている蔵であれば、蔵がある市町村だけでなく、酒米をつくっている農家のある市町村に対しても、ふるさと納税の返礼品に提案できる商品を持っているといえます。さらに、地元に酒蔵がない米所の市町村に営業をして、酒米の提供を受けて自分の蔵で返礼品の酒を仕込むというビジネスも成り立つわけです。

地元産品となる条件のまとめ

条件のまとめ

ふるさと納税の返礼品になるには

こだわりの酒は、ふるさと納税の返礼品の条件を満たしていることはわかっていただけたと思います。では、それを実際にふるさと納税の返礼品にしてもらうにはどうすればいいのでしょうか。

実は、上記の条件は国が最低限市町村に守って欲しい条件であって、市町村によってさらに細かな条件を追加して、応募された商品を審査して、返礼品にふさわしいかを判断しています。また、酒については一般の商品とは別枠で、地元の蔵や組合を通じてのみ扱うとしているところもありますので、原材料が地元産という条件でふるさと納税の返礼品に応募しようと考えている際には注意が必要です。さらに、商品だけでなく、会社に対しても条件を課しています。ふるさと納税は市町村の地域創生でありPRでもあるので、そこに関係する会社はきちんとした会社であることが求めらるためです。一般的には、税金の未納がないこと、暴力団等との関係がないことが求められます。また、全国から多くの申込が想定されますから、万が一でもトラブルが起こってしまえば市町村のイメージダウンにつながりますから、そういうことを起こさない体制がとれることが求められます。これらの条件は、市町村で細かく違っているので、市町村に確認する必要があります。

上記のような募集条件をまとめた書類が「募集要領」となります。応募に必要な書類の様式と一緒に市町村のホームページで公開されているのですが、どこにあるかわかりにくいことが多いです。一般的にふるさと納税のページは、ふるさと納税を検討している人、ふるさと納税を申し込もうとする人に向けの情報が中心なので、返礼品の応募情報は別のページにあることがほとんどです。検索しても見つけにくいので、直接市役所や町村役場に相談するのが早かったりします。でも、市役所等のどこに行けばいいかわからない、なんとなく敷居が高いということで、二の足を踏んでいるなら、ふだんからなにかと相談する機会がある機関(例えば、商工会や商工会議所、酒造組合等)に相談して、役所の人を紹介してもらうのがいいでしょう。

人気返礼品になるための企画を考えてみませんか

役所に行って、書類の書き方を教えてもらい、つくった書類を提出して手続きを済ませて、ふるさと納税の返礼品になればそれで大丈夫というわけではありません。店の棚にのせてもらうようになったのと同じで、数ある商品の中から自分の蔵の酒を選んでもらわなければいけません。

多くの市町村は、ふるさと納税の業務を委託事業者に任せています。なので、委託事業者と相談しながら、いい商品企画を考えてくださいとなります。限定品として新しいラベルを考えようとか、関心を引きやすい商品のPR文を考えよう、蔵のいくつかの酒の飲み比べセットや、他の蔵と組んで地元の複数の蔵の飲み比べセット、他の生産者と組んで酒とそれに合う産品のセットをつくろうといったアイデアを出し合いながら、多くの人の関心を引く返礼品をつくりあげていくことが重要です。

もしも適当な相談先がなくて困っているなら、わたしたちに相談してみるのはどうでしょう。様々な分野の専門知識とノウハウを持った呑兵衛の知恵をお貸しできると思います。