日本酒の酒税が下がる

■日本酒の酒税がまた下がるって?

酒税法改正で、日本酒の酒税の引き下げが2023 年 10 月に予定されています。
2018 年の酒税法改正で決められたスケジュールに従って、2020 年 10 月に税率変更の第一段が実施されましたが、2023 年 10 月に第二段、2026 年 10 月に第三段が実施されます。これにより、清酒(日本酒)と果実酒(ワイン)の税率が一本化、ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)の税率も一本化されます。

(出所)「酒税改革」︓平成 29 年度税制改正パンフレット︓財務省 HP
zeisei17_03.pdf (mof.go.jp)

■税率改正の本命はビール系飲料

酒税は直接的には酒造メーカーが納めますが、メーカーは酒税相当分をお酒の販売価格に含めて消費者に売るので、酒税を負担するのは最終的には消費者になります。従って酒税は、お酒の小売価格を通じて、私たち消費者の生活に大きな影響を与えます。下表は、製品価格にどの程度の酒税が含まれるかをまとめたものです。

(注)酒税等負担率が相対的に高い品目(負担率30%以上)を黄色で網掛け。
ビール(負担率44.1%)については、さらに赤枠で強調。
(出所)国税庁「酒のしおり」2020年より筆者作成
酒のしおり(令和 3 年 3 月)|国税庁 (nta.go.jp)

日本の酒税の特徴は、ビール系飲料の酒税負担率が高くなっていることです。上表のようにビールの小売価格219 円には酒税と消費税の合計約90円分が含まれ、小売価格に対する酒税等負担率はダントツの41.1%です。すなわちビールの消費者は、他の酒類の消費者より多くの酒税を負担しているともいえます。
ビールメーカーにとっても、酒税が高いのは望ましいことではありません。製品にかかる酒税が減れば、ビールの販売価格が下がり売上を伸ばせるため、何とか適用税率が下がるように工夫します。原材料に麦芽やホップ以外を使って、ビールの風味に近いビール系飲料を作ろうと工夫してきたのが、発泡酒や新ジャンル(「第3 のビール」など)です。

ただ国としては、消費者の需要が低税率の商品に流れてしまうのは困ります。
また本来、税率に違いがなければ、ビールに似せた飲料の開発は不要なわけで、いわば品目ごとに税率が違うことが、メーカーに無駄な商品開発を行わせる原因ともいえます。
そこで今回の改正では、ビール、発泡酒、新ジャンルの品目の定義を整理すると共に、「発泡性酒類」として同じ税率に統一することで税負担を公平化し、またメーカーにはもっと国際競争に役立つような商品開発に力を注いで貰おうとするものです。

(出所)「酒税改革」︓平成 29 年度税制改正パンフレット︓財務省 HP
zeisei17_03.pdf (mof.go.jp)

税率変更については、三段階でビールの税率を下げ、発泡酒と新ジャンルの税率を上げます。 ビールの酒税は、2020 年10 月に350 ㎖あたり77 円から70 円へ▲7 円下がっていますが、これを含めて今後、合計▲22.75 円の引き下げが行われます。一方、発泡酒の酒税は合計で+7.26 円の引き上げ、新ジャンルは合計で+26.25 円の引き上げが行われます。2026 年10月以降、ビール系飲料の酒税は全て350 ㎖あたり54.25 円で統一されます。

(出所)前出の”「酒税改革」︓平成 29 年度税制改正パンフレット︓財務省 HP“を筆者が加工。

■日本酒の酒税は下がる

日本酒はどうでしょうか。日本酒とワインは「醸造酒類」に分類されますが、改正前の日本酒の酒税は 350 ㎖あたり 42 円、ワインは同28 円と差があり、税負担の公平化のため税率を統一しようというのが今回の改正趣旨かと思われます。
具体的には日本酒の酒税を下げ、ワインの酒税を上げます。日本酒の酒税は、2020 年10 月に350 ㎖あたり▲3.5 円、さらに2023 年10 月に更に▲3.5 円引き下げられます。ワインの酒税は、2020 年 10 月に+3.5 円、2023 年 10 月更に+3.5 円引き上げられます。2023 年10 月以降、「醸造酒類」の酒税は全て350 ㎖あたり 35.0 円で統一されます。

(出所)前出の”「酒税改革」︓平成 29 年度税制改正パンフレット︓財務省 HP“を筆者が加工。

日本酒の次回(2023 年10 月)の減税額は、350 ㎖につき▲3.5 円なので、1 升瓶(1800 ㎖)に換算すると▲18 円になります。普通酒で1,878 円、特定名称酒なら3,000~4,000 円の本体価格と比べると▲18 円はいささか小さく見えるかもしれません。
前回(2020 年 10 月)の減税も同じ規模(1 升あたり▲18 円)でしたが、その時の日本酒の酒造メーカーの対応は、販売価格を下げたもの、据え置いたもの、まちまちでした。例えば大手では、菊正宗酒造は次のようなコメントを出しています。

【菊正宗ネットショップからのご案内】
「2020 年 10 月からの酒税税率変更に伴い、弊社一部商品を除いて販売価格を変更いたします。(中略)
一部の価格据え置き商品につきまして、昨今の原材料費、輸送費、人件費、印刷代等の高騰により、本来、値上げするべきところを見送っていた商品となります。そのため、今回の酒税法改正において、価格を据え置かせていただいたことを予めご了承ください。」
酒税改正で、日本酒は段階的 に減税されます 。 – ブログ| 菊正宗ネットショップ ( kikumasamune.shop )

酒類の価格は自由価格なので、個々の酒造メーカーの判断により決定されますし、小売の実勢価格はコロナ等でさらに影響を受けるものと思われますが、何らかの形で消費者に還元されると良いですね。