コロナ禍は日本酒にどれほどの影響を与えているのか

以前のように居酒屋で気軽にお酒を飲むことがはばかられる状況が半年以上続いています。どれだけの影響が出ているのか、肌で感じているところはあるでしょうが、果たしてその肌感覚はどれほど実態と合っているのでしょうか。統計と比べてみましょう。

まず、酒の統計は国税局が扱っています。いわずもがなですが、酒税があるのでバッチリ押さえています。この原稿を書いている10月下旬では7月までの速報が公表されているので、その資料をもとに話を進めていきます。

前年同月比でみると、落ち込みが際立っているのは実はビールで、3月から4月、5月の歓送迎会、花見などのイベントが軒並み中止になったので、大きく下げています。では、日本酒はどうかというと、やはり3月から4月、5月と落ち込んでいますが、ビールほどではなく、回復も早くなっています。我慢ができないから減らないとみるべきなのか、それだけ支えている支持層が厚いというべきなのか。見解はお任せします。

図 令和2年の酒税課税状況(対前年同月比)

資料:「酒税課税状況表(速報)」国税庁
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/tokei/sokuho/01.htm

では、日本酒の種類別でみたら、どれも同じように落ち込んでいるのかというと、ちょっと違っているようです。農林水産省が日本酒造組合中央会のデータからまとめたところによると、令和2年の1月から8月の日本酒全体の前年同期比では87%ですが、特定名称酒の方が一般酒と比べて減少が大きくなっています。ビールと発泡酒だと、ビールの落ち込みが大きかったのと同じように、グレードの高い方がより大きく落ち込む傾向があるようです。(ビールと発泡酒ほどの差はありませんが・・・。)

図 令和2年の日本酒種類別出荷量の対前年同期比

資料:「酒造好適米の全体需給の推計(米に関するマンスリーレポート(令和2年10月号)抜粋)」
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/attach/pdf/sake_r2chousa-9.pdf

とはいうものの、実は日本酒の出荷量は年々減少傾向にあったのは事実です。それでも前年比で2~7%の減少ですから、前年同期から13%もの減少となっているのは、コロナ禍の影響といえるでしょう。